○慢性咳嗽とは
胸部レントゲン写真や肺機能検査に異常がないのに、8週間以上咳が続くことを慢性咳嗽といいます。
(3~8週間続く咳は遷延性咳嗽といいます。)
○慢性咳嗽の主な原因
・咳喘息
・アトピー咳嗽
・副鼻腔気管支症候群(鼻・副鼻腔炎、慢性気管支炎)
・感染後咳嗽(かぜ症候群後の咳嗽、百日咳など)
・胃食道逆流による咳嗽
・喉頭アレルギー
・心因性咳嗽
・その他
○主な慢性咳嗽の診断と治療
2週間以上続く咳の場合は、まず肺結核を除外する必要があります。必要であれば、胸部レントゲン検査を行います。
★以下は慢性咳嗽の主な原因となる3つの疾患についてです。★
咳喘息
[ 概 念 ]
■喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒュー)や呼吸困難感を伴わない慢性咳嗽を訴え、呼吸機能はほぼ正常ですが気道過敏性が亢進し、気管支拡張薬治療で咳嗽が消失する疾患です。
■咳のみを症状とする喘息(の前段階)です。
[ 症 状 ]
■原則的に痰のからまない乾性咳嗽(カラぜき) を認めます。
■咳嗽は、就寝時、深夜あるいは早朝に悪化しやすいです。上気道炎、冷気、運動、喫煙、雨天などが増悪因子となります。
■喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒュー)や呼吸困難感は原則として認めません。
■アトピー疾患(気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹)の家族歴が認められます(40-100%)。
[ 検 査 ]
■聴診:呼吸音は正常です。しかし、強制呼出(頑張って息を吐いてもらう)をすると咳が出やすくなります 。
■胸部XP:異常を認めません。
■血液検査:アトピー素因の検査(末梢好酸球数、血清IgE値、特異的IgE抗体)が陽性のことが多いです。
■肺機能検査: 1秒量、1秒率は正常のことが多いです。末梢気道閉塞の指標はしばしば低値を示します。
■気道過敏性:軽度亢進のみ認めます。
■気道可逆性:軽度認めます。
[ 治 療 ]
■気管支拡張剤
■ステロイド剤(吸入、経口剤)
[ 予 後 ]
■長期管理:咳喘息患者さんの約30%(10-40%)が気管支喘息に移行します。
■吸入ステロイド剤の早期導入、長期管理が必要です。
アトピー咳嗽
[ 概 念 ]
■アトピー素因(アトピー性疾患)を持っておられる方、またアトピー性疾患を発症する可能性のある方に認められ、慢性咳嗽の原因となります。
[ 症 状 ]
■喉(喉頭・気管)の掻痒感(イガイガ感)を伴う乾性咳嗽を唯一の症状とします。喉への痰のひっつき感を伴う場合もあります。喘鳴、呼吸困難感を認めません。
■咳嗽発作の時間帯は、就寝時、深夜から早朝、起床時に多いです。
■冷気や暖気の吸入、受動喫煙、会話、電話、運動などで誘発されます。
■聴診:異常を認めません。
[ 検 査 ]
■血液検査:アトピー性素因(末梢血好酸球数、血清IgE値、特異的IgE抗体)が陽性のことが多いです。
■肺機能検査:異常を認めません。
■気道過敏性:認めません 。
■気道可逆性:認めません。
■咳受容体感受性の亢進を認めます。
[ 治 療 ]
■抗アレルギー薬(ヒスタミンH1遮断剤)
■ステロイド吸入薬あるいは内服薬
[ 予 後 ]
■長期的治療は不要です。アトピー咳嗽は気管支喘息を発症しません。約4年間で50%の患者さんに咳嗽の再燃を認めます。
副鼻腔気管支症候群
[ 概 念 ]
■慢性副鼻腔炎と慢性気管支炎(気管支拡張症、びまん性汎細気管支炎)を伴ない、湿性咳嗽や膿性痰をしめす認める慢性咳嗽です。
■気道の粘液・線毛クリアランスの障害や、 小児期の肺炎の後遺症などによって生じることがあります。
[ 症 状 ]
■呼吸困難発作を伴わない喀痰を伴なう慢性咳嗽が8週間(3週間)以上継続します。
■後鼻漏、鼻汁および咳払いを認めます。
[ 検 査 ]
■胸部レントゲンにて両側肺野にびまん性に粒状陰影の散在を認めます。
■胸部CT検査にて両肺野のびまん性小葉中心性粒状陰影を認めます。
■血液検査にて寒冷凝集素価の高値、血清IgA高値 となります。
■気道過敏性:亢進を認めません。
■咳感受性:認めません。
[ 治 療 ]
■14員環マクロライド系薬剤(エリスロマイシン、クラリスロマイシンなど)が中心 。
■去痰剤など
[ 予 後 ]
■マクロライド少量持続療法で改善することが多いですが、一部に難治性の例も認められます。
○慢性咳嗽の原因疾患の治療的診断
1. 黄色や緑色の膿性痰を認める場合(湿性咳嗽)は、細菌感染による副鼻腔炎や気管支炎の存在を考えマクロライド系などの抗生剤を投与します。
2. 痰をほとんど認めない場合(乾性咳嗽)は、まずは気管支拡張剤などの喘息の治療を行い、効果があれば咳喘息と診断します。
3. 喘息の治療で効果がなければ、アトピー咳嗽やアレルギー性鼻炎・咽喉頭炎などのアレルギー疾患を考え、抗アレルギー剤を投与します。
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